洋画家 妃香利 - Hikari

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クサカベ工場見学 その1「色をつくる=錬金術」

2014年10月24日

 先日、クサカベさんの絵具を製造している工場見学へ行って来ました。

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 工場に入るなり、油絵具の匂いが・・・
ダメな人もいるようですが、私にとっては懐かしさを感じる、なんとも落ち着く匂いです。。

 さて、最初に案内されたのは、油絵具の中に入っている“分散材”というもの作る場所でした。
“分散材”とは、油絵具を構成する材料(絵具の色を出す元となる顔料や、顔料と一緒に練りこむ乾性油、補助剤)が分離しないようにする安定剤だそうです。

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 大量の茶色い液体の中に白いツブツブしたものが入っています。こちらが“分散材”の原料となる“乾性油(リンシードオイル)”“ステアリン酸”だそうです。こちら本来、揚げ物をする用のマシンだそうです。よく見るとたしかに・・・。そして右の写真が出来上がった“分散材”です。固そうに見えますが、ナイフですくってもらうと意外にトロトロっとしていてカスタードクリームのようでした。缶の中にどっぷり。
 
 ここで、先ほど出てきた油絵具を構成する材料(色のもととなる“顔料”“乾性油”)についてもお話をうかがってきたのでご紹介します。

【油絵具の顔料について】
 顔料とは絵具の色を作り出している、いわゆる色の粉です。昔々は天然の鉱石や土、昆虫などを粉末にして原料にしたそうですが、今は技術が発達してほとんどが合成顔料だそうです。合成顔料といっても、海底で自然にできる鉄などを高温で焼き、鮮やかなブルーの顔料を作ったりもするんだそうですよ。そう考えると合成と言えど天然もの?な気もします。その他にも理科の実験のように薬品同士で化学反応を起こさせることによって顔料が出来たり。「色をつくる=錬金術」なんですよと仰っていました。

 海底で自然にできる鉄でブルーの色を錬金術で作る!なんだかとても “神秘的” に感じました。ゴッホや昔の画家達が生きた時代と比べ、今の絵具は同じ色でも安価でかなり高性能(色の安定性や耐久面などが優れている)そうです。車の塗料なんかも同じ顔料を使っているそうですよ。車の色は色あせたりしませんよね?と言われ、確かに!と納得してしまいました。身近な素材を使って説明していただくと、急に親近感がわいてとても分かりやすかったです。

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 左の写真が海底で自然にできるという希少金属(別名:レアメタル)の一種「金属コバルト」。それを1000度以上の高温で焼くと右写真の “青い粉(顔料)” ができあがるそうです。これが絵具になると「コバルトブルー」という色名になります。



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 ちなみに、こちらが絵具になった状態。左が「コバルトブルーディープ」右が「コバルトブルーライト」。微妙に色が違うの分かりますか?今回、開発の方にうかがい初めて知ったのですが、同名色の「ディープ」「ライト」の違いは、暗い・明るいかの違いではなく、ライトの方が “黄色味が強い” という意味なんだそうです。なので、カドミウムグリーンディープ・ライトや、ウルトラマリンディープ・ライトなどをイエロー系の絵具と混ぜて使う際は「ディープ」ではなく「ライト」の方と混ぜると、相性が良く色が濁りづらいそうです。その他、ディープやライトの記載がない色でも、青みよりの黄色とか、赤みよりの黄色など、持っている色の要素がいくつかあるので、それを考えながら混色すると良いとアドバイスいただきました。これ、意外と知らない方多いのでは?と思いました。ぜひ絵具を混ぜる際に参考にしてみてください。



【乾性油について】
 乾性油は空気中の酸素と化学反応を起こして固まる油です。油絵はこの乾性油樹木の脂を調合した“ペインティングオイル” と油絵具を混ぜ合わせながら描いていきます。水彩絵具のようにドライヤーや扇風機をあてても乾かないのは、水のように蒸発して乾燥するわけではなく、その空気中の酸素との化学反応に長い時間がかかるためなんですね。







つづく・・・次回は顔料(色の粉)が絵具になるまでの行程をご紹介します。

株式会社クサカベHP
▶http://www.kusakabe-enogu.co.jp/index.html

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